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障がいからのライフストーリー|聴覚情報処理障害 (LiD/APD)の場合

執筆者の写真: Mie SUDO
Mie SUDO
5月15日
読了時間: 6分

更新日:9月7日


 私が「聴覚情報処理障害 (LiD/APD)」という用語で私自身の脳で行われている聴覚処理の特性を悟ったのはつい最近のことです。研究が進んで、聞き取りの処理の困難(聞き取り困難症、LiDともよばれるようになってきました)という現象が、社会的に少しずつ認識されるようになってきました。それまでその現象を表現する言葉もなく、困難の出どころを自覚できなかった間、たくさんのからだのサインが私を訪ねてきました。

 人とのコミュニケーションで困ってきたたくさんのこと、楽しかったはずなのに疲労が強くて回避したくなるような気持ちになっていた社交の場、日々の身体の痛みや、気分の揺れ、勉強や仕事のパフォーマンスにムラがあったこと。謎だったこれまでの困難感や葛藤の日々に、少しずつ理解が訪れ始めたのです。



聴覚処理障がい (LiD/APD) とその影響


 表現する言葉がないあいだ、原因不明の疲労や痛みにたびたび襲われていました。変動があり、常にあるわけではないさまざまな状態がやってきては去り、自分の通常の状態を認識するのもなかなかの苦労だったのです。専門性の高い場所や医師に出会っても、この障害との関連を指摘してくれた人はおらず、正確な診断と治療が受けられず悪化したこともありました。



自己発見の旅


 様々に起きている問題が、聴覚処理障害との関連にあるのだと自ら気が付いてからようやく、適切な治療にたどり着くことができました。ひとつの治療が始まると、それだけでは説明できない身体の症状があることにも気が付いていきました。女性である私は、月経周期との関連が耳の聞こえに影響していたことが、徐々にわかってきました。その他に、過去にトラウマとなったことが、声の記憶として現れたりしていました。

 私は感覚と記憶をつなぎ合わせてからだのリズムを尊重していく作業にも取り掛かりました。人から勧められてある心理療法を受けたことがきっかけとなりました。同時に当事者会に顔を出し、仲間を見つけることも大事な作業でした。ホルモン療法や分子栄養法、聴覚の方では負担を軽減するデバイスを工夫しながら、ようやく身体・生活感覚の恒常性を取り戻していきました。



新たな視点の獲得


補聴器を調整する人

 こうした苦労の末、私が手に入れたものもありました。それまでの私は、多くを聞き取ろうとして、小さな物音や人の声、ことばにならないようなからだの感覚にも耳をすましていました。

 自己と他者の心の動きや、変動するものを感じて、それに即時適応しようと必死に生きていたことで、言語のスキルがかなり高くなっていたのです。驚きました。コミュニケーションのサポートを受けたくて行った先で、WAISという発達知能検査を受けてわかったのです。

 これは私が、音から言語に処理するプロセスを補うようにして、人生のあいだずっと発達させてきた力でした。



コミュニケーション能力の進化

光の靄が立つ湖を眺める人

 40代になって大学院に入るころには、コミュニケーション能力が非定型に進化して、誰も私に聴覚情報処理障害があるとは気が付かなかったほどです。そして、臨床心理学に来て、そうして二次的に発達した能力が、カウンセリングにとっての重要なスキルになることを知りました。



聴覚処理特性と感情の関係


 人間は無意識に生きものが動く感覚を拾い、見たもの、聞いたもの、触ったものなどの五感と統合して他者認識をしています。聴覚情報の処理(言語による理解)に少々時間がかかっていた私は、相手のメッセージをどうにかこうにか聞き取りたいという想いで、いつの間にか人間の中でも一番早く動く「情動(やがて感情として認識される)」という感覚をキャッチするのがとても上手になったのです。

 人間には何が災いするか、何が幸福になるかわからないものです。自分にとって障害であった現象が、同じように能力を伸ばしていたのですから。



体のリズムを尊重する


 ただし、その障害から培った能力を使うことには、私自身の中で大きな抵抗がありました。私が苦労して身に着けてきたもので、決して楽々と手に入れたものではなかったし、いつもその能力は、他者を理解し、自分が社会に適応することを中心に使われていたからです。私自身のことは置き去りになっていたことに気が付きました。

 まずは、自分の身体と向き合うことからはじめて、抱えていた抵抗をゆっくりほどいて、辛かったこと、苦しかったこと、無理していたこと、たくさんの抑えていた感情が浮上してくるのを待ち、そして受け入れて、そして解放してあげる作業が必要でした。

 私自身のからだのリズムを尊重して、ゆっくりと対話していったのです。


石造りの街の路地を歩く人


そして…






聴覚処理障害 (LiD/APD) とカウンセリング


 さて、これは誰の物語でしょうか?

 聞き取り困難症?それでカウンセリングできるの?ご安心ください。1対1で雑音の入りにくい環境では、会話に問題はありません。むしろ、聞き取りやすい状況ですと、私の身体性や感受性はいかんなく発揮されます。

 私はあなたの言葉はもちろんですけれど、身体の感覚の方が、あなたにとって望ましい方向はどこなのかというヒントをくれていると思いますし、そうした感じたことの先に自分にとってぴったりと腑に落ちる言葉=存在の実感が見つかると思います。



私のライフストーリー


 このサイトやブログを通して、私もまた一歩動き出すことができました。

みなさんに応援してもらいながら、そして相談に来てくれる人との関係を大切にしながら、私自身のライフストーリーも完成形はなく、いつでも少しずつ変化しながら形になっていきます。そんな営みをご報告できたらと思っています。



現代の知識と感情の理解


 生成AIが発達している現代は、知識や言葉の理解だけならいくらでも得られる時代になりました。ですが、身体感覚や感情はまだ人と人とのあいだに置いてみてはじめて、多くのことがわかります。慣れていないと少々怖いと感じるかもしれませんが、大丈夫です。ペース配分や、仕事や生活のリズム、知識の補完や、やりやすいワークなど工夫ができます。ぜひ一緒にPoetree (ポエツリー)で作業していきましょう。



Poetree (ポエツリー) 心理カウンセリング&ライフストーリーラボ

Poetree (ポエツリー) では、名づけられにくい経験や、

身体性・生活史・関係性のなかで複雑になった困りごとを、

安心して感じ、共に味わい、腑に落ちる言葉を探していく

そんな場をつくりたいと考えています。

それらを特定の領域に分断せず、

その人が生きてきた全体の流れのなかで、

丁寧に捉え直していきます。  


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